【初心者向け】ノベルゲームシナリオの書き方
基本的には小説の作成方法と大した差はありませんが、
ゲームにおけるシナリオ作成の場合特有の懸念点なども交えて解説いたします。
【プロットとは】
そもそもプロットとは何でしょう?
結論から言うと
ストーリーの【見取り図、設計図】です。
故事成語<塞翁が馬>の由来を例にとってご説明します。
※意味:
人生の幸不幸や吉凶は変転するものであり、
人間の予想や思惑どおりにはならない。
A.
国境のとりでの近くに、運命判断など占いの術に長けた老人の一家がありました。
ある日飼っていた馬がなぜか突然国境の外、
胡人(北方の異民族)の住むあたりに逃げていってしまいました。
人々が見舞いにやってくるとこの老人は
「今度のことは福を呼び込んでくれるかもしれんよ」と言います。
それから何か月かして、
この逃げた馬がなんと胡人の飼っている立派な馬を何頭か引き連れて戻ってきました。
人々がまたやってきて「良かった良かった」と祝福すると老人は
「これは災いをもたらすかもしれんよ」と言います。
この老人の家では良馬をたくさん飼っていたのですが、
ある日老人の息子が馬から落ち足の骨を折ってしまいました。
人々が見舞いにやってくるとこの老人は
「今度のことは良いことかもしれんよ」と言います。
それから一年が過ぎ、胡人が大挙して国境を越えて侵入してきたので、
体の頑健な男子はみな兵隊にとられてしまいました。
彼らの多くはこの国境のあたりで戦死しましたが、
老人の息子は足を悪くしていたため徴兵を免れ、
親子ともども命拾いしたということです。
B.
飼っている馬が逃げる
⇒逃げた馬が、立派な馬を引き連れて戻ってきた
⇒その立派な馬から息子が落馬しケガをした
⇒ケガをしていた息子は徴兵を免れた
⇒そのおかげで、命拾いをした
AとBの違いは分かりますか?
Aはストーリーであり、物語で、
Bは物語を分かりやすくステップで分けた”プロット”です。
Bは見て分かる通り、
原因⇒結果⇒原因⇒結果⇒……
と、物語の繋がりを分かりやすくする役割があります。
【プロットを作る利点】
先ほど、ご説明した通り、
プロットはストーリーの前後を分かりやすくする効果があります。
プロットを先に作っておくことで、
中盤にこういう展開を入れたいから、序盤にはこういう伏線を貼っておこう!など、
ストーリー全体を俯瞰したうえで、展開を考えることが可能です。
また、ゲームシナリオの場合、
共同で制作しているメンバーや、
イラスト、楽曲、声優、スクリプトなどの外注先に、
作品のイメージをつかみやすくしてもらえる資料にもなります。
さらに、分岐を作成するような作品の場合、
分岐の管理(フラグ管理)の観点からも
シーンごとにしっかりプロットを作成することをお勧めします。
※
もちろん、プロットではなく、あらすじなどでも問題はありませんが、
全体を見せることができない場合、各種依頼資料は、
外注先と齟齬が発生しないようにとても細かく作成する必要があります。
特に、自分でゲームを作ることが初めてで、慣れていない場合には、
依頼先のプロを巻き込むことで、自分では考え至らない点に気づいてもらえるかもしれません。
【プロットがいらない人】
ここまでプロットの必要性を説明してきましたが、
少数ではありますが、プロットが必要ない人(場合)もいるようです。
具体的にどんな人(場合)かというと……
- 1.超短編(数千字)の作品で、頭の中に完全にストーリーが確立できている場合
- 2.とにかく筆が早く、思いついたことを書いていているだけで良い作品が作れる人
- 3.キャラクター設定と舞台設定をとにかく完璧に詰め切って、あとはその場のキャラクターに憑依(感情移入)してストーリーを進めていける人
- 1.超短編(数千字)の作品で、頭の中に完全にストーリーが確立できている場合
1.については分かりやすいと思いますが、
超短編で冒頭からオチまで完全に頭の中で組みあがっているなら、
わざわざ”プロット”という形でアウトプットは出さなくてもよいでしょう。
- 2.とにかく筆が早く、思いついたことを書いていているだけで良い作品が作れる人
2.は、要は天才です。
『ミステリーの書き方』によると、小説家の宮部みゆきさんなんかはプロットを書かないでミステリーを書いている、という話です。
※参照:ミステリーの書き方
ただ、共同でゲームを制作する場合や、
そもそもストーリーを書き上げたことがない人は、
プロットをしっかり立ててから、シナリオを書き始めることをお勧めします。
未完成の傑作より、
完成した佳作が大切です。
その為にも、道筋(プロット)を書いておくべきなのです。
- 3.キャラクター設定と舞台設定をとにかく完璧に詰め切って、あとはその場のキャラクターに憑依(感情移入)してストーリーを進めていける人
TRPGなんかになじみがある方はイメージしやすいかもしれません。
キャラ設定や舞台設定を完璧に決めて、
あとはその場のキャラクターのロールプレイをすることでストーリーを作っていきます。
筆者個人的にはそれなりに気に入っている手法ではありますが、
いかんせん、気づくと、
そのキャラクターっぽくない動きをしている(=作者が動かしたいように動かしている)状態になってしまうことが多々あります。
そして、いつの間にかキャラ崩壊していたり……
基本的にゲームのシナリオの場合、
プロットなしでシナリオを書くことはおすすめしません。
【箱書きとは】
続いて、プロットの作り方を簡単に解説します。
プロット作成の方法としては”箱書き”という方法がメジャーです。
もともとは映画脚本界隈で用いられていた手法で、
その名の通り、1シーンごとに見やすくまとめるものです。
視覚的にもシーンのつながりが分かりやすく、
後からシーンを前後させるなど、ストーリーに変化が出た場合にも役に立ちます。
項目については、厳密に決まりはありませんが、
自分が後から見ても混乱しない情報を書いておきましょう。
- 時間
- 場所
- 登場人物
- 主な出来事
- 主なセリフ
この辺りが良いと思います。
ゲームシナリオを執筆している私の場合は、
場面変更、もしくは時間的跳躍があるまでを1つのシーン(箱)としてまとめています。
※時間的跳躍:同じ場面でも朝のシーンから、時間を空けて夕方のシーンに切り替わる場合など
箱書きの粒度(情報量の多さ)にも決まりはありません。
ただ、先ほどからお伝えしている通り、
ゲーム開発においては、複数人での共同開発がほとんどになると思います。(依頼を含む)
さらに、ヒロイン√ごとにライターを分けることもあるでしょう。
このような場合は、
各√との整合性や、バランスを取るために
なるべく情報量を増やした箱書きにすることをお勧めします。
※箱書き例
上記画像は実際に使った箱書き例です。
日付単位で進行するシナリオだった為、
シナリオ内での日付も記載してあります。
シーンでは、時間帯や場所。
要素は、シナリオ内でのこのシーンの存在意義となるものを記載。
※要素がないシーン(別にあってもなくてもシナリオの出来に関係してこないシーン)は削ってしまった方が良いことが多いです。展開が間延びするとユーザーが飽きて途中で離脱してしまいます。
タイムラインには、そのシーン内での更に細かい動きを記載しておきます。
これを書いておくことで、実際にシナリオを書く際に迷わなくなるだけでなく、
共同開発者との意思疎通もしやすくなります。
【まとめ】
・プロットとは
⇒ストーリーの設計図!
・プロットを作る利点
⇒他人との意思疎通が簡単になる
⇒シナリオの整合性を取りやすくなる(書いてて混乱しない)
⇒分岐用のフラグ管理などが分かりやすい
・プロットがいらない人
⇒ゲームシナリオの場合は基本的にちゃんと作ろう!
・箱書きとは
⇒プロット作成手法の1つ。
⇒視覚的にも分かりやすい!
⇒√間の整合性がとりやすくなる
ここまでいろいろ書きましたが、
最終的には自分の性格に一番フィットした書き方を確立してください。
体系を気にしすぎて、書けなくなってしまってはそれこそ本末転倒です。
それでは、良きゲーム制作を!
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